神奈川県高等学校教育会館

実践機会の拡大から考えるものづくり教育の新しい可能性



ものづくり教育研究会

  
 本年度、ものづくり教育研究会では、LEDイルミネーションなどの題材をあげ、ものづくりに取り組む専門高校の生徒の技術を、実社会の中で役立てる機会を設け、学校教育と実践活動をつなげながら、社会貢献していく新しい形を提案する事を目標に活動した。またその中で、震災の影響を受けたものづくりの現場に、明るい希望のある話題を提供したいと考えた。

完成したLEDCUBEの産業教育フェアでの展示
 LEDイルミネーションの題材としては、まず、一般に普及していない珍しいものを製作し、それをコミュニケーションツールとしても活用できる事をイメージし、3次元の立体電光掲示板LEDCUBEを製作する事にした。LEDCUBEは、完成のイメージはあったものの、その製作や制御のプロセスに関する資料がほとんどなく、手探りでの取り組みとなった。生徒は当初、誰もやった事のない、立体造形と電気配線を両立するハンダ付けに、非常に苦労しながら試行錯誤していたが、活動の中で技術を向上させ、これを完成する事ができた。研究会で事前に購入していた試作材料費に、本事業の助成が大きく役立った。

 完成したLEDCUBEは、校内行事に始まり、外部の各種イベントや研究発表など、様々な場面で活躍し、非常に好評を博した。自分たちの製作したものが、学校内だけでなく校外でも大きく評価される事で、生徒達は自信をつける事ができた。このLEDCUBE製作にあたり、企業を引退した技術者の方からも、製作に関する指導やアドバイスを受け、実社会でのものづくりの一端を経験させる事ができた。


てくのまつりの「光るコースター」製作体験指導
 その後、LEDイルミネーションに関連した、簡単な製作課題「光るコースター」を考案し、てくのかわさきで行われたてくのまつりにて、ものづくり体験教室を開いた。30名程の子供達に、ものづくり体験を指導する中で、これまで教えられる側であった生徒が、人に技術を教え、製作したもので喜んでもらう事を体験し、自分達の技術が実社会の中で役立つ事を実感する事ができた。また、今年度、研究会で新たに考案した赤外線ラジコンロボットにおいても製作教室を行い、こうした成果を得る事ができた。
 てくのまつりに参加した事で、川崎市役所労働雇用部からの紹介と依頼を新たに受け、かわさきマイスターである伊藤氏(有限会社伊藤工業)の指導によって行われたゲルマニウムラジオ製作教室において、製作指導員として協力した。活動の中で、この様なこれまでなかった新しいネットワークを広げる事ができた。


 一年を通して、本年度は、外部の機関と交流をはかり、その中で自分たちのものづくりの技術を活かし、それを向上させていくというそれまでできなかった事を実現する事ができた。活動の中で、技術を実社会の中で役立て、生徒達の自信を構築し、また社会貢献する意義を感じさせる事ができた。こうした、学校外の機関とのコラボレーションにおいて、予算をとる事は難しく、これまでは活動ができないでいたが、本事業の助成のおかげでこれを実現できた事に深く感謝したい。次年度以降も、今年度できたノウハウとネットワークを活かし、活動の中で、自信に裏付けされたものづくりのできる人材の育成に取り組んでいきたい。
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