神奈川県高等学校教育会館

「スクールジャーナリズムにおける学校新聞の研究」



学校新聞研究会

  
  1. 研究の目的
     スクールジャーナリズムは学校の民主主義を育成し、民主主義社会の担い手を育てる重要な役割を持っている。学校を活性化していくためにも、全学校に学校新聞のノウハウを提供できるように、理論面を含め実践的な新聞づくりのテキストを作成する。
  2. 研究の概要
    1. 研究の実施
       神奈川県高等学校新聞連盟(高校文化連盟新聞専門部)の有志メンバーを中心に「学校新聞研究会」を立ち上げ、理論面を含めた実践的な新聞づくりのテキストを作成していった。テキスト作成に当たっては、全体の構成を検討し、その編集方針に則って、分担執筆を全体会で話し合っていった。6回の編集会議を経てある程度のものはできてきたが、製本するにはもう少し期間と費用を要する。そのために、来年度も同趣旨による継続申請をお願いしたい。
    2. 編集の方針
      新聞作りのABCとDTP編集・・・ここがポイントだ(案)
      • 発行予定  2011年3月15日
      • 原稿提出日 2010年11月15日
      • 編集方針 「新聞作りのABCとDTP編集・・・ここがポイントだ」はサブノート形式にしたABC編とインデザインによるDTP編、交流新聞作りの3部構成とする。
      • 各項目の編集構成
        1.ポイント・・・2.基本解説(ポイント項目にあわせる)・・・3.応用・問題演習
        の3部編集構成を基本とする。項目によっては該当しないケースもある。
      • 版型  A4版 本文78 ページ+表紙4ページ
      • 形式  本文31字×35行 □の解答スペースは6字分(1字分は通し番号)
          欄外の解説は本文13字を目安に、あまりぎっしり行がならないようにする。
          イラスト、写真なども多用してビジュアルな紙面を心がける。
          各単元ごとに解答を載せる。
      • 第3部の新設  夏合宿や全国でもやっている交流新聞作りのページを設ける。
      • 費用   高校教育会館の学術助成を申請する。
      • 編集委員会 
        分担執筆 
        編集長 中根
        編集委員 芳賀、牧野、河越、内田、林、富樫、駒野、中村、喜多村、久保田、宮坂、山田
      • 役割分担
        ページ   内容  担当者  備考
        表紙  タイトル(全面写真)      
        表紙裏(表2)         
         1  目次  中根   
        2〜5 第1部 新聞作りのABC
        1.新聞作りの意義
         芳賀   
        6〜7   2.新聞作りのポイント  中根   
        8〜13   3.企画  牧野   
        14〜17   4.取材  河越   
        18〜23   5.文章   内田   
        24〜33   6.見出し   林   
        34〜41  7.レイアウト  富樫   
        42〜47  8.写真    駒野(山田)   
        48〜49  9.発行後におこなうこと  中村   
        50〜51  10.新聞連盟(専門部)の事業と規約  河越   
        52〜53  11.新聞用語  喜多村 活字縮小 
        54〜55  12.気をつけたい用字用語集    久保田 活字縮小 
        56〜57  13.著作権、個人情報保護と新聞    宮坂   
        58〜60  第2部 DTP編集
        1.DTP編集の基本
         山田   
        61〜66  2.DTP編集の実際  山田   
        67〜68  第3部 交流新聞作り 
        1. 交流新聞作りのポイント
         中根   
        69〜73  実際の交流新聞例   中根   
        74  奥付   中根   
        裏表紙〔表3〕          
        裏表紙  写真      
    3. 編集の実際
       編集は上記の編集方針の下に分担執筆によっておこなう。その実際例として、「新聞づくりのポイント」を報告する。
      新聞づくりのポイント
      ここが ポイント だ!
      1. マンネリの打破
           スクールジャーナリズムの使命は「風」を起こすこと
      2. 新聞づくりの五か条
        (1) 記事は足で書け
            言い古されたことばだが、新聞は取材が命だ
        (2) 多角的な取材を
            取材は肯定意見だけでなく批判も取り入れ、客観的・多角的な掘り下げを  
        (3) 真実を伝えよ
            事実を伝えることはもちろん、真実は何かの視点を持つ
        (4) 読まれる新聞づくりを
            読みたくなるようなビジュアルな紙面をこころがける
        (5) オピニオンリーダーたれ
            学校や社会に提言し、世論を喚起し(風を起こし)よりよい改革を
      3. 新聞は「公器」
           特定の人の利益ではなく生徒の知る権利を保障するためのもの
      1 マンネリの打破
      学校新聞はただ単に学校の出来事を知らせるだけでなく、広い意味で学校内外のニュースを報道するスクールジャーナリズムといえる。「ジャーナリズムの反意語は(1  )である」とよく言われている。私たちはとかく前例を踏襲しがちであるが、新聞づくりにおいてはつねに問題意識をもってチャレンジし続けることが肝要。いい新聞はマンネリの打破から生まれる。偉大な映画監督であり俳優であったチャップリンは「いままでで、あなたの最高傑作は何ですか」と尋ねられると、「ネクスト ワン」と答えたという。「ネクスト ワン」つまり、「次の作品です」と答えるとは何とすばらしいことか。人間はとかく前例を踏襲しがちである。しかし、「前例がないからやってみよう」の精神が大切なのだ。この考え方は、ビジネス社会をはじめ人生の成功哲学にも共通している。
       新聞は民主主義を守り、それを創っていく原点である。民主主義を保持していくためには、不断の努力が重要である。スクールジャーナリズムは学校におけるその担い手であるのだ。「風」を起こし学校を活性化させたい。なお、学校新聞は学校教育の一環であるという視点も忘れないようにしたい。

      2 新聞づくりの五か条
      新聞づくりには、なぜ新聞をつくるのかという新聞づくりの原点をつねに視点に入れ、次にあげる五か条を意識したい。
      (1)記事は(2  )で書け。
       取材さえしっかりしていれば、文章はおのずと書ける。文章がうまく書けない人も次第に上達する。取材中心で依頼原稿は極力避けよう。
      (2)(3  )な取材を。
       取材は一方的にならないこと。+−両方の意見を取材しよう。学校新聞では三者(生徒・教師・保護者)は必須。地域・専門家の取材もまじえ、記事に深みと広がりをもたせよう。特集記事はこれを心がけよう。
      (3)(4  )を伝えよ。
       新聞は事実を正確で公正に伝えることが命である。そこにある真実はなにか。ジャーナリズムの真髄は真実が何かを伝えることにある。
      (4)(5  )新聞づくりを。
       読んでもらってはじめて新聞の影響力が発揮される。ビジュアルな紙面づくりを心がけ、読まれる工夫をしよう。そのためには、他紙の研究も。
      (5)(6  )リーダーたれ。
       記録し知らせるだけの新聞ではなく、問題提起や提言をして学校や社会を変えていけたら素晴らしい。問題意識を常に持ち、時代を切り開いていく気概を持とう。まさに、「風」を起こせ。

      3 新聞は「公器」
       公器というのは古い言葉かもしれないが、新聞は特定の人や機関のためにあるものではなく、世間一般のひとの「知る権利」を保証するためにあるものだ。スクールジャーナリズムとしての学校新聞は生徒のためにある。新聞の発行は自己満足でやっているのではない。生徒を代表して取材をする。この視点を忘れないようにしたい。表現の自由とプライバシーの権利を常に意識しよう。
       新聞は民主主義を守り創造していく原点であるという認識を持ちたい。
       こうした視点をもって新聞づくりをするには、高い見識と責任をともなう。日本新聞協会の「新聞倫理綱領」を参考にしてみよう。

      以上のように、サブノート形式に特色があり楽しみながら自学自習できるように工夫をしている。
  3. 研究のまとめ
     現段階では、冊子(別紙)のように、「新聞づくりの意義」といった理論的なものをはじめ、文章や見出しについてのノウハウを含んだ「新聞づくりの手引き」と実際にDTP編集をおこなうにあたっての実習編、さらには、「交流新聞づくり」にいたるまで新聞作りを網羅できる内容となった。この冊子を作成することによって、県内はもとより全国で学校新聞作りをおこなっている、またはおこなおうとする学校の羅針盤になることと思われる。スクールジャーナリズムが学校を民主化し、活性化していく原点として今後も研究を継続していきたい。
    各編においてはもう少し、追加することを含め、現在、追加執筆中である。 来年度には製版した完成版を提示できると思われる。
     完成版の製本に向けて、来年度も同趣旨による継続申請を重ねてお願いしたい。

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