神奈川県高等学校教育会館

温室効果に伴う成層圏の気温低下現象の教材化



理科大気環境研究会

  
 温室効果は温室効果ガスによって温室のガラスのように地表から放射される遠赤外線が閉じこめられ、熱がよどむことによって起こると考えられる。熱がよどんだ外側は熱が伝わらず逆に温度が下がることが予想される。
 本研究は地上から気象庁のデータが存在しうる高度について、気温の経年変化や気温の鉛直変化を調べた。さらに温室効果に寄与する気体は二酸化炭素の他に水蒸気の効果が大きいことが知られており、本研究でも水蒸気量として容積絶対湿度の経年変化および鉛直変化を調べた。気温は気圧が低下すると断熱膨張をして本来の気温よりみかけ上低下するので、高度による気圧の低下を補正した温位という温度を求めて鉛直の気温変化を調べた。
 気温の鉛直分布は館野と南鳥島の1月は地上から高度18000mまで気温が減少した後、上昇する変化を示している。7月は地上から高度16000mまで気温が減少した後、上昇している。これらの高度は対流圏界面の季節変化によるものと考えられる。成層圏で気温が上昇する原因はオゾン層が太陽の紫外線を吸収するためである。温位は館野も南鳥島も7月では地上から高度15000mまで温位は緩やかに上昇し、それ以上の高度では急激な温位上昇になっていることがわかった。これは高度15000mにはオゾン層が存在し、太陽からの紫外線によって暖められているためである。相当温位をみると地上から高度10000mまで、ほぼ温度は一定になっている。これは地表から水蒸気が蒸発して上空で凝結し、雨になって落下する対流現象が起き、潜熱が運ばれるためである。
  図20から相当温位と温位の差が、館野7月を除いて年々小さくなっていることがわかった。これは大気中の水蒸気量がすべての高度で減少していることを意味している。館野と南鳥島の1月は同じような形状のグラフとなり、温暖化により気温上昇の著しい高度は15000m付近であることがわかった。高度28000mでは逆に寒冷化が著しい。地表付近では地表面のみが気温上昇している以外、12000m付近まで寒冷化していることがわかった。
 7月では1月と同じように館野と南鳥島は同じような形状のグラフとなっており、地表から高度15000mまで気温上昇している。地表付近は館野の方が急激な温暖化をしている。高度20000mでは寒冷化が著しいことがわかった。容積絶対湿度の減少が著しいのは地表から高度100mで館野1月および南鳥島1月、南鳥島7月であることがわかった。地表付近は温暖化が著しい高度であり、水蒸気は温室効果ガスとして働くが、水蒸気量が極めて減少していることから水蒸気によって温室効果が生じているのではないことがわかった。

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