神奈川県高等学校教育会館

「地域社会におけるIT支援活動の実践的研究」

デジタルボランティア実践研究グループ(ぱそぼら)
  
 本研究は地域社会の情報格差を解消するために「情報弱者」と呼ばれる人々に対する高校生にも可能な支援活動の方法を研究することを目的とした。本年度はアプリケーションソフトとパソコン、携帯電話、デジカメなどの基本的操作の相談を中心とする支援活動を、沖縄県糸満市米須地区および藤沢市のNPO法人「COCO湘南」の運営する地域交流施設「COCOみちしるべ」の協力を得てグループのメンバーが実践した。活動は主に高齢者を対象として計13回行った。
 高齢者のIT利用に関しては(1)身近に支援者がいない。(2)さまざまな情報サービスの理解のみならず、契約や料金について不安である。(3)高齢者に配慮した携帯電話のサービスが始まっているものの業者間でサービス用語が統一されず支援を困難にしている。そして、(4)OSやoffice系ソフトなど基本ソフトのバージョンアップの際に高齢者への配慮が必要であることを指摘したい。高齢者のITへのニーズは個人差が大きいが、今回の実践からOffice系ソフトの習得よりも、携帯電話や電子メール、デジカメ、年賀状作成そしてゲームなどの分野で高齢者の生活を豊かにする可能性が感じられ、これらの分野における支援が有益と思われた。コミュニケーション手段としての携帯電話と電子メールは高齢者を孤立させないためにも重要であると考えた。
 支援する側の課題は@支援の拠点とする公共施設においてインターネットが利用しにくい。A支援に入る前から信頼関係の醸成が重要であり、高齢者施設、老人クラブ、デイサービスそして学校など既存の何らかの活動の場に追加的に参加する方法が有効である。B携帯電話の利用についての高校生による支援活動はさまざまな懸念があり、難しい。ただしグループホームに暮らす高齢者に高校生たちがメールの操作を教え、メール交換をするといった活動は、非常によい可能性をもつようにも思われる。大学生や専門学校の学生の活動として呼びかけることも一つの方法と考えた。
 高校生による支援活動の実践に向けて、携帯電話の契約の問題や修理に伴う責任を高校生が負わないような工夫や運営体制づくりを責任ある人々が分担する必要がある。その上で高校生が地域社会で特に高齢者に対して行う活動としては、デジタルカメラの利用、年賀状作成、描画や音楽ソフトの利用の支援そして、コンピュータゲームを利用した交流などが適当であると考えた。ゲームは今日多様に発展しているが、高校生と高齢者の交流のツールとして期待できる。そのなかで、利用年齢層を幅広く持つ例えば任天堂wiiなどのゲーム機が役立つであろう。デイケアのような場のインストラクタとして高校生ボランティアが活用できるかもしれない。
本研究グループの今後の活動は、今年度の実践研究を踏まえて、@障がいを持つ人々への支援についてのニーズと可能性の把握と試行。A高校生ボランティアの育成と活動実践プログラムの作成、B今年度行った地域社会の支援活動の継続等を中心に継続してゆく。
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