読売新聞(2003.8.3)より
大検なしで受験資格
文科省方針  各大学が個別審査

  文部科学省は二日までに、中卒者や高校中退者など、大学入学資格のない人についても、大学が独自に志願者の学習歴を審査し、大学入学資格検定一大検)を免除できるように制度を改正する方針を固めた。実現すれば、フリースクールやサポート校などに通った不登校生なども、大学によっては大検を経ないで受験できるようになる。文科省は与党との調整がつけば、関係法令を改正して、来年の入試から実施する。
 文科省は、高校卒業資格を得られない「各種学校」に当たる外国人学校卒業者の大検免除を検討。学校評価の困難な朝鮮学校のようなケースでは、大学が独自の審査を行い、個人単位で大検を免除する仕組みを導入する方針で、これを日本人の通う各種学校などにも適用すべきだと判断した。
 大学が志願者の学習歴などを審査し、高校卒業同等以上と判断した場合、その大学に限り、大検なしで受験できるようにする。
 対象として想定されるのは、フリースクール出身者のほか、サポート校、語学学校などの各種学校卒業者、大学の聴講生など。
 文科省は、こうした措置を採り入れる大学には、学習歴を審査する体制の整備を求めるが、試験を行うかどうかなどの具体的審査方法は大学に委ねる方向だ。
 国家試験や自治体などには「大検合格」を受験資格にしているところもあることなどから、文科省は大検制度は存続させる方針。大検は、文科省が実施。昨年度は二回で約二万七千人が受検している。
☆各種学校  学校教育法一条で定める学校や専修学校以外で、学校教育に類する教育を行う施設。都道府県が認可する。自動車、和洋裁学校、予備校などがある。全国に約二千三百校、生徒数は約二十二万人。

大検免除
外国入と日本人
同制度導入で決着


解説
 文部科学省が、中卒者や高校中退者などについて、大学が独自に志願者の学習歴を審査し、大学入学資格検定(大検)を免除できるように制度改正を行う方針を固めた背景には、外国人学校卒業者の大学入学資格問題とのバランスがある。
〈本文記事1面〉
 外国人学校卒業者に大学判断での大検免除を認めると、日本の各種学校卒業者にも認めていない便宜を図ることになってしまうからだ。文科省は結局、外国人日本人ともに同じ制度を導入することで、決着を図ることにした。
 どれほどの大学が、日本人の大検を免除するかは未知数だが、今回の措置で、大検の存在意義は低下する。文科省はこれを機に、大検を「大学へのパスポート」・から「高卒資格認定試験」の性格に変えていく考えだ。
 大学判断の大検免除には、「高校を通らずに大学に行ける道が広がり、日本の学校体系を崩すことになる」との懸念が強かった。しかし、不登校の激増や、社会人の多様な学習形態に応えるにはそうした道の拡大も、時代の要請と言えそうだ。(丸山謙一)
 外国人学校卒業者の大学入学資格を巡り、朝鮮学校の卒業者には、各大学が個人ごとに審査して大学入学資格検定一大検一免除を認める仕組みを、文部科学省が検討していることが二日、分かった。政府・与党と調整した上で、来年の入試に間に合うよう省令や告示の改正に着手する。
 文科省は既に、生徒の国籍を問わないインターナショナルスクールについては、英米の教育評価機関の認定を受けていれば、学校ごとに大検を免除することを決めている。今回は新たに、英米以外の学校でも、本国の認可があり、十二年間の正規の教育課程を修了したのと同等と認められる場台には、学校ごとに免除を認めることにする。 
 北朝鮮のように国交のない国の学校や、未認定のインターナショナルスクール、本国が認可していない学校は、各大学が受験生個人ごとに学習経験などを審査する方向で検討している。
 現在、公私立大の半数は独自判断で外国人学校卒業者の大検を免除しているが、国立大は認めていない。今年三月、文科省は英米系学校だけの大検免除を認めたため、アジア系学校が反発、再検討していた。
 朝鮮高級学校の卒業生は毎年約一千人。うち20%が日本の大学に進む。大検はさらにこのうち20%が受けているという。
☆大学入学資格検定  (大検)高校に進学しなかった人や、中退して大学入学資格のない人などに、高校卒業と同等以上の学力があるかどうかを文科省が認定する制度。国語、世界史、数学など計九ー十科目の受検が必要。八月と十一月の年二回実施。