毎日新聞(2003.5.25)新教育の森より
 横浜高校・模擬会社経営で競争
「やればできる」  生徒たちに自身

 総合学習に2泊3日の「企業経営合宿研修」を導入した横浜高校(横浜市金沢区、平野伸夫校長)で19〜2旧、第1回の合宿が行われた。対象の1年生449人(2クラスずつ年6回実施)のうち67人が参加した。初めて挑む企業経営に戸惑いながらも「分かってくるとおもしろい1」。校内の宿泊研修施設で寝食を共にすることで、仲間同士の親ぼくも深まったようだ。生徒たちは3日間で何を感じ、学んだのか。教室をのぞいてみた。【川久保美紀】
戦略当たり下位から首位へ
工夫と努力で困難打開


◇未来の夢
「企業家を育てるのが目的ではないですよ。大学の先にある未来の夢を描くには、高校生のうちから社会の動きを知る必要がある」。総合学習担当の大和大教諭は、導入の意図を語る。
 教材は、米国で発足したNPO(非営利組織)の経済教育団体「ジュニア・アチーブメント」が開発したソフトを使った。生徒は5人程度のチームで"企業"を起こす。販売価格、生産量、宣伝広告費、設備投資額、研究開発費の五つを決定し、ソフトに入力すると業績が示され、MPI(格付指標)の高さで順位を競う仕組みだ。
 教室内に15の会社ができた。社名入りの手作りの商標を掲げた机を囲んで、生徒たちは業績リポートの結果を分析し、次の経営方針を立て、9四半期分の経営をシミュレーションした。
 下から2番目だった業績を首位まで伸ばした「DMP」社で〃社長"を務めた梶佑輔君(15)は「戦略が当たりました」と躍進の秘密を明かした。銀行から資金を借り入れて生産能力を上げる、在庫を増やしてセールで一気に売る、などの戦略が成功した。
 経営方針を巡って議論に熱中する生徒からは、こんな声が返ってきた。「いかに生産コストを安くしてもうけを多くするか、この駆け引きがおもしろい」(岩岡徳君)。「利益を上げるのって難しいし頭を使う。でも分かってくるとおもしろい」(黒葛原祥君)
◇輝くまなざし
 ビジネス界の第一線で活躍するリーダーを講師に招いたセミナーでは、「モバイル・インターネットキャピタル」
 社長の西岡郁夫氏が来校した。生徒は「折りたためる多機能テレビ」「クレジット機能付き携帯電話」などの新製品を発案して、西岡氏に提案し、商品化できるかを検討した。最終日には「株主総会」を想定し、各社がプレゼンテーションした。
 「子供たちの目の輝きが違う」。生徒から相次いだ「楽しかった」「もっとやりたい」との感想に、大和教諭は目を細めて話した。「経営の過程では、販売不振や倒産の危機などの困難にぶつかる。それを工夫と努力で打開する力を身につけてくれた。きっかけさえあれば、子供はこんなに変わるんですね」「やればできる」。修了証を手にした生徒たちの笑顔の中に、そんな自信が見えた。

「青少年に直接語りかけたい
環境省次官が特訓授業 鎌倉女子
大高等部

 今年4月に開校した鎌倉女子大(松本紀子理事長、鎌倉市大船6)大船キャンパス視聴覚ホールで23日、環境省の中川雅治事務次官が同高等部3年生175人に、特別授業「地球と共生する日本を目指して」を講義した=写真。
 中川次官が「未来を担う青少年に環境問題を直接語りかけたい」と提案して始まった。4月の新聞記事で「同次官が中高校へ出かけて直接話したい」と掲載されたのを読んだ松本理事長が、環境省に申し出て実現した。同次官は今月初めに、東京-町田市の玉川学園中等部へ出かけたのが最初で、今回が2校目となった。
 講義は「人間の活動が地球環境を悪化させる。いかに人類が環噴問題を考えるか」と46億年の地球の歴史と温暖化の問題を分かりやすく講義した。その後、テラスに場所を移して懇談した。
 終了後、茅ケ崎市から通う生徒(17)は「分かりやすい話で、大変な時代だと思った」と話した。中川次官は「熱心に聴いてもらい大変心強いと感じた。今後も国会の合間をみて、多くの中高校に出かけて話した
い」と語った。【吉野正浩】