読売新聞(2003.2.14)より | ||||||
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「感じる」70% 本社世論調査 | ||||||
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学生の 思考力 判断力 不安の声 |
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読売新聞社の全国世論調査によると、国民の7割が大学生の学力や知識不足を心配するとともに、これが日本企業の競争力低下などにつながることを懸念する声も多い。また、大学に対して職業教育の充実を求める意見も強い。改革論議が進む大学の現状を、国民はどう評価し、どんな期待を寄せているのか。 調査データをもとに分析してみた。〈本文記事2面〉
以下、「国語カがきちんと身についていない」44%、「自分の考えをうまく表現できない」41%、「自発的に勉強したがらない」"%、「基礎的な計算が正確にできない」16%1の順。 「筋道立てて考える習慣」や「分析したり判断する能力」がきちんと身についていないと見る人は、40歳代で各62%、52%と多く、「自発的に勉強したがらない」との指摘もこの年代では40%に上っている。これに対し、「国語力が身についていない」「基礎的な計算が正確にできない」といった基礎学力に問題があるとの見方は、60歳代で各54%、24%と目立っている。 大学生の学力に対する見方は、管理・専門職でとりわけ厳しく、「分析・判断能力」が身についていないと見る人(63%)が6割を超えるほか、「国語カが身についていない」(54%)、「自分の考えをうまく表現できない」(52%)はいずれも全体平均を10ポイント程度上回っている。 学力低下の問題については、知識や学力がきちんと身についていない大学生が増えることは、日本企業の競争力や技術カの低下につながると心配する声が経済界などからは聞かれる。 そこで、こうした意見についての賛否を、大学生の知識・学力不足を感じることがあるという人に聞いたところ、「その通りだと思う」が84%を占めた。 「その通りだと思う」は、60歳代以上では90%にも達している。 「友人作る場」53% 「教養の習得」は21%
大学のあり方 不満派6割超 今の日本の「大学」のあり方については、「不満]」が「やや」44%、「非常に」17%の合計で61%に上った。「満足している」は25%だった。「不満」は、大学生の子供がいる人が多いとみられる40ー50歳代で69%に上るほか、管理・専門職では84%という高率に達している。 ●子供に望む学歴 大学以上 64% でも「本人の考え尊重73%
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最近、社会人を対象に、仕事に役立つ知識を身につけるための講座やコースを設ける大学が増えている。そこで、機会があれば、こうした社会人向けの教育を受けてみたいかどうかを聞いたところ、「受けてみたい」が61%を占め、「そうは思わない」(36%)を上回った。「受けてみたい」は、サラリーマンでは70%に上り、サラリーマンの中でも、30歳代(77%)やホワイトカラー(76%)では4人中3人を超えている。 経済の国際競争の激化や、厳しい雇用環境が続く中で、専門知識をしっかり身につけておきたいと考えているサラリーマンがかなりいるようだ。 専門知識持つ人材 育成に7割強期待 法律や経営など専門分野の実務家を育てる「専門職大学院」の設置が決まっているが、大学や大学院が、高度な専門知識を身につけた人材を、もっと積極的に養成すべきだという意見について、「賛成」が72%を占めた一反対」5%、「どちらとも言えない」20%だった。男性、ホワイトカラー層の76%が賛意を示しているほか、40歳代、60歳代(各74%)や大学卒業者(75%)でも、賛成派が4人中3人を占めている。 入試科目増 反対35彩賛成25% 学生の学力低下の現状を踏まえて、国公立大学を中心に、センター試験や二次試験の科目を増やす動きが進んでいるが、大学生の学力低下に歯止めをかけるために、大学受験の入試科目を増やすべきだという意見についての賛否を聞いたところ、「反対」(35%)が「賛成」(25%)を上回った円どちらとも言えない」も36%を占めた。 高校生以下の子供がいる人では、「反対」は41%に上り、「賛成」(23%)に20ポイント近い差をつけているが、大学入試をすでに体験ずみの大学(大学院)生の子供がいる人でも、「反対」(39%)が「賛成」(35%)を小差で上回っている。 また、大学生や大学を卒業した若者に知識や学力がきちんと身についていないと感じている人でも、「賛成」(28%)より「反対」(38%)の方が多い。 |
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進学容易化で見る目厳しく 国立学校財務センター部長 天野郁夫 大学に焦点を絞った世論調査は珍しい。調査結果からは、長く続いてきた日本の学歴社会が大きく変ぼうし始めていることがうかがわれ、興味深い。 何よりも大学・短大進学率が50%に近づいたいま、大学は特別な場所ではなく、人々にとってごく身近なものになり、それとともに、人々の大学を見る目が大きく変わった。大学のあり方に不満を抱いている人が6割を占めるのも、大学に進学したくない子供を、説得するより自由にさせるという親が圧倒的に多いことも、その端的な表れと読むことができる。 大学に対してはまた、それが専門的な知識・技術を身につけるよりは、仲間を作り、レジャーを楽しみ、学歴を得る場所になっていることに、きびしいまなざしが向けられている。大学を卒業しても、じゅうぶんな知識や学力が身についていないと感じている人たちは7割に上り、それが日本企業の将来への不安感にもつながっている。 注目されるのは、身についていないとされる知識や学力の中身である。学校、とくに大学の世界ではいま、基礎的な読み書きの学力低下が大きな問題になっている。 しかし調査結果を見ると、一般の人々が問題にしているのはそれ以上に、論理的な思考能力や分析・判断能力の不足である。それは、学力低下の対応策として入試科目を増やすことに、意外なほど賛成意見が少ないこととも無関係ではあるまい。大学と社会の間で、学力低下についての現状認識に、おおきなずれがあることがうかがわれる。 大学に向けられたまなざしのきびしさは、職業教育志向の高まりともかかわっている。 これだけ大学進学が容易化したのに、専修・各種学校への進学希望者は8人に1人を占める。また、大学院の高度専門職業機関化を支持する人が7割をこえ、社会人対象の職業教育の機会を大学に期待する声も高い。学歴よりも実力、仕事をする能力。 それは専門的な職業教育を軽視してきた大学に対する、強い批判の表れと見るべきだろう。 進行中の大学改革について、考えさせられることの多い調査結果である。 |